「失われた時を求めて」第二篇 文庫第三巻・文庫第四巻 プルースト 吉川一義 訳 (岩波文庫)

2021/6/22
失われた時を求めて 第二篇
第二篇「花咲く乙女たちのかげに」
文庫第三巻『スワン夫人をめぐって』 文庫第四巻『土地の名―土地』
第三巻は、
社交風俗を描いています。スワンの恋から十数年の年月が経過しています。1890年代中葉の1年半の物語です。パリの住居に電気や電話が引かれはじめた頃の事です。
日常の自我と創造する自我の乖離。恋愛という心的現象がいかに主観的なものであるかを、執拗に描いています。愛する人を目の前にすると、どぎまぎして冷静に観察して記憶にとどめる余裕がなくなる。
作家の観察が出来事自体を描くのではなく、むしろ、精神の微妙な揺れを捉える、精神のドラマを描きます。自分の心中にも巣くうはずの微細な心の揺れ。人間がいかに自分の心理から抜け出せない存在であるか、おのが心理の囚人たる人間の宿命。
芸術論、芸術の独創性をも語っています。「天才の作品がただちに賞賛されることが少ないのは、書いた人が非凡で、似たような人がほとんど存在しないからである。」面白いと思った知見は、「そもそも知性というのはこの世に一つしか存在せず、全員がその知性の共同間借人として、それぞれ個別の身体の奥からその知性を眺めているのかもしれない」という見方です。
第四巻は、
海辺のリゾートという、場を設定しています。ページ数は多いのですが、比較的読みやすい内容でした。
何かしら、引き込まれるこの世界は、多くの人達にとって私にとっても、こんな、なつかしさは覚えがあるものだと自分の内面を探りたくなります。
様々な現実との関わり、その無限の可能性から、その現実を選んで描写しているからだと思います。その夢想と現実との乖離、外面と内面、建前と本音、それらを、行動や出来事で表現するのではなくて、それらを、考察する精神のドラマとして描いて行きます。
ある人の行動規範は、その人が求める例えば、人との関わり「人を喜ばせるのが好きなために・・・」という自己規定の中に求められるだと思います。

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