「失われた時を求めて」第三篇 文庫第七巻  プルースト 吉川一義 訳 (岩波文庫)

2021/10/29
失われた時を求めて第三篇
第三篇「ゲルマントのほう」
*第三篇は文庫第七巻までなのですが、一気に感想文として記事にすると長くなりそうなので、2回に分けて、第五巻・第六巻と第七巻、それぞれの感想文とします。今回は第七巻です。
第七巻 ゲルマントのほうⅢ
お話しの前半は、三人の女性との関係の展開を描いています。一人の女性は、すでに手に入った快楽として憧れの対象にはならずに、貴重なものとして描かれません。もう一人の女性は、身を任せてくれるものと思い込み不首尾に終わり、妄想と夢想に終始する様子が描かれています。三人目の女性は、もはや<心の波立ちを覚えなかった>のですが、晩餐の招待を受ける事柄が描かれています。確かに、手に入らぬものは執拗に求めるものですが、手に入るものにはありがたみを覚えない人間存在の一般が表現されていると思います。お話しの後半は、晩餐会に「私」を招待した公爵夫人の才気を主題として描かれています。その才気は、夫人のダジャレや毒舌や逆説によって語られています。高貴な貴婦人である夫人がその地位にふさわしくない言動をするからこそ、また、その言動を才気として感じられるような演出があってこそ、才気として成り立っている、そういう虚構の世界を表現しています。
(この巻が独立しているような内容だと思いました。また、この巻の後半は当時の晩餐会の様子が描かれていますが、感情移入がなかなか難しく、時間がかかりました。)

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